【雑記】2022年夏コミに参加して

こちらのブログではお久しぶりです。

昨日、2022年の夏コミに参加してきました。

長年にわたって描き続けている「覇王の輔」シリーズですが、13巻を出したのが2019年の11月、その後ずっと時間が空いて14巻を21年の冬コミ、15巻を今回の夏コミで発行しました。

コロナ禍で同人イベントが中止、縮小されたという事情もありますが、それ以前から刊行ペースが落ちていることは、長年読んでいただいている読者の方は感じ取っておられたかもしれません。

 

「覇王の輔」シリーズを描き始めて数年たったころ、父が亡くなりました。

父は白川とは年が離れており、年配の人にありがちな「漫画はくだらない」という価値観を持っている人でした。漫画に限らず、子供が自分の気に入ることをすれば褒めますが、気に入らないことをすれば頭から否定するというタイプの人でした。

物理的な暴力を振るうようなことはなく、経済的にも恵まれていたと思いますが、私は常に「これを好きになったら父から否定されるのではないか」と警戒し、おびえながら成長しました。

この作品の主人公である范蠡さんも、「父親の圧が強すぎて自分が何をやればいいのか分からなくなってしまった」という心にトラウマを抱えている人です。それは明らかに自分自身の投影です。

歴史上の范蠡さんの名誉のために申し上げますと、実際の范蠡さんはもっとしっかりした立派な方だったと思います。この作品の范蠡さんは、あくまで私の作品における、創作上のキャラクターです。

 

話は戻りまして、私がこの作品を描き始め、その際范蠡さんのキャラクターを上記のように設定したことは、当時存命していた父親に対して、「自分は漫画が好きで漫画を描いている」ということを証明したかった、ということが大きかったかと思います。

父には私が漫画を描いているということは話していないので、実際に父に認めてもらおうとかそういうことではないのですが、自分を否定してきた父への反発、反抗心のようなものが、そこにはありました。

 

ずっと描き続けているわけですから、多分私は漫画が好きなのだと思います。

しかし、私は「自分は漫画が大好きなんだ」と思うことができませんでした。漫画は「描いてはいけないもの」「価値がないもの」であり、ずっと漫画を描くことにある種の「うしろめたさ」を感じていました。

「三度の飯より漫画が大好き!」と熱く語る他の作家さんをいつも羨ましく思っていました。どうして私はあんな風に自分の好きなものを堂々と好きと思えないんだろうと、疎外感のようなものも感じていました。

ですので、「覇王の輔」という作品を描くのは、自分が漫画を好きで描いているんだと、自分自身に対して確認する意味もありました。

 

そんな中、父が亡くなりました。
これからは父からの否定に怯えず、好きなものを好きと思っていいんだ、「漫画を描くだけで楽しい!」と言えるようになるんだ、と思いました。

しかし実際にはそうはなりませんでした。反発の対象である「父」という存在がなくなり、ただ「自分の好きなものが本当に好きなのかわからない」という状態だけが残りました。

相変わらず自分は何者かに否定されているように感じ、それに対して「そうじゃない!」と反発する気持ちをぶつける対象がなくなり、これから先、この作品をどのように描いていけばいいのか、わからなくなりました。

ちょうどその頃、ゲームにはまって二次創作を始めたこともあり、「覇王の輔」の執筆ペースはかなり落ちてしまいました。待っていて下さった方には、大変申し訳ありませんでした。

 

父が他界してから数年経ち、自分の中でも少しずつ気持ちの整理ができてきました。

おそらく、私はこの先も「三度の飯より漫画が大好き!」と目を輝かせながら語ることはできないと思います。好きなものを手放しで好きと思えない、好きになることに後ろめたさを感じる、そんな生きづらさと一生付き合っていかなければならないと思います。

ただ、私はそれでいいのではないか、と思うようになりました。

今はもう、自分を一歩離れたところから見て、父からの否定の言葉が真実ではないことや、自分がその影響によって認識を歪まされてしまっている、ということを客観的に見ることができます。

おそらく、私にとっての「好き」はそういうことなんじゃないか、と思います。

 

これから先、そういう自分の思いを作品として昇華していけたら、と思います。

主人公の范蠡さんだけでなく、そのほかのキャラクターたちも、悩みながら、自分と戦いながら、少しずつ成長していく姿を描いていきたいと考えています。

作品に対して、前向きに取り組んでいきたいと思いますので、これからもどうぞよろしくお願いします。

 

 

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